写真》病室から見た空

 天井がどんどん後ろに過ぎていく。廊下もエレベーターも、見えるのは天井だけ。2時間ドラマ(2H)のファンなので、傷ついた被害者が病院に搬送されて処置室へ運ばれる光景は見慣れているが、あの場面をストレッチャーに載せられた側から見るとこうなるのだな、と初めて知った。先週、当欄を休ませていただいた「筆者の事情」とは、こういう事情である。僕は生まれて初めて――新生児のときを除いて――入院を経験した。

 

 病のことは、あまり言うまい。ただ循環器系の不具合で、手遅れになれば命を落としたかもしれない、と言えばお察しいただけるだろう。経緯を振り返れば、ああしていなければアウトだった、医師がこうしてくれなければ危うかったということがある。的確な判断に救われたわけだが、そこに受診のタイミングなど偶然が重なったのも、また事実だ。by chanceの命拾い。そんな体験をくぐり抜けて、これまでの人生観は音をたてて崩れた。

 

 それは、当欄にもかかわる。今までは1週1冊をずっと続けようと漠然と思っていた。もちろん、1000回を突破することはないだろう。だが、王選手の本塁打記録868本ぐらいは……そんな野望がちらついていたことは否定しない。これが、大いに甘かったのだ。

 

 今回、痛いほどわかったのは、こうした営みはずっと続くかもしれないが、突然遮断することもある、ということだ。僕たちは、その可能性を抱え込んで生きている。しかも遮断は、by chanceに委ねられているとはいうものの、齢を重ねるごとに確率が高まっている。

 

 当欄は、昨今の世相で気になることを長いまくらに振り、それを熟読した本の「これは」という文言と絡みあわせてきた。分量はA4判3枚。ザクッと言えば、まくらを1枚で書き、後段3分の2を本の話に充てる。これを、一つの型にしてきたと言ってよい。だが突然の遮断がありうることを心に刻んでみると、型に縛られるのが虚しくなった。いつ終わるかもしれない、ならば、もっと自由にやろうではないか。そう思えてきたのだ。

 

 突然の遮断が訪れる前に、すべきこと、したいことを優先させておこう。だから、本読みブログではあるが、ときには本を外れ、今回のように「まくら」だけということがあってよい。分量だって、まちまちだ。そしてときには、休店させてもいただこう。

 

 ということで、来週金曜からは通常モードに戻るつもり。ただ、by chanceは本との出会いだけではない。ブログそのものが偶然にさらされて、ゆらゆらと揺れていくだろう。

(執筆撮影・尾関章、通算440回、2018年10月5日公開)

 

■引用箇所はとくにことわりがない限り、冒頭に掲げた本からのものです。

■各編は原則として毎週金曜日に公開します。

■公開後の更新は最小限にとどめ、時制や人物の年齢、肩書などは公開時のものとします。

■通算回数は前身のブック・アサヒ・コム「文理悠々」の本数を含みます。

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コメント
《いけませんね、「枕」を書いては!枕は寝るためのものですぜ》(肝啓さん)
心温まるお見舞いに感謝します。拙稿本文では触れませんでしたが、僕はすでに退院。医師は、今まで通りの生活を勧めてくれています。もちろん、無理はしませんので。ありがとうございました。
  • by 尾関章
  • 2018/10/05 5:44 PM
「入院」は安静にするためです。記者魂のなせるわざ、とはいえ、いけませんね、「枕」を書いては!枕はは寝るためのものですぜ。日頃の健筆ぶりを保つためにも、まずはゆるりとお過ごしください。くれぐれも返信なさらぬよう!一に睡眠、二に睡眠、三、四がなくて五は午睡というぐらいですから。
  • by 肝啓
  • 2018/10/05 11:55 AM
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